今日(12月12日)はフランク・シナトラの100歳のお誕生日。生誕100年というのだろうか?実は私がジャズを歌いたいと思ったのは、シナトラの歌声に感電してしまったから。ピッツバーグのバーで流れてきた”Fly Me To The Moon”が稲妻のように私に衝撃を与えた。頭の先から足の先まで、ビビビっと。。。その時まだ若かった私は、それがシナトラだって事も知らなかった。暗いバーで、天からの声のように流れてきたその声。ただ”格好いい”と、こんなクールなもの聴いた事ないと思った。リズムが、スイングがとってもアメリカだった。その場の空気に合っていたのかもしれない。それがスイングってことも分かっていなかった。今も変わらずカッコいいと思っている。あの声とスイング。絶妙なタイミング。
日本では古い人と思われているようだし、以前、日本のジャズベーシストがシナトラを”あれはジャズじゃない。ポップミュージックだ”と暴言したり、あまり彼の価値は理解されていない。今年、日経新聞のシナトラ生誕100年を取り上げたコラムでも、あまり彼の偉大な存在については書かれていなかった。これじゃ伝わらない。 アメリカでは、今でも彼の音楽が毎日どこかで流れている。NYでの野球の試合でも”ニューヨーク、ニューヨーク”は流れるし、これはタイムズスクエアの新年のカウントダウンの時も毎年聴く。テニスのUSオープンでもシナトラの他の曲が流れていた。今年の夏、生誕100年で、ニューヨークの図書館で行われていたシナトラ展を見に行ったが、"An American Icon" というサブタイトルがついてた。彼は最も偉大なシンガーの一人なのだ。 イタリア人移民だった彼は、子供の頃、イタリアの有名なオペラシンガーをいつも聴いていたという。歌がとにかく上手い。他にない声色。ピッチが性格な上にクリアーな発音、ナチュラルなスイング。シナトラは今も私のアイドルだ。 あれから私は”Fly Me To The Moon”をよく歌っているが、歌う度にがっかりしてしまう。どうしてもあんな風に格好よく歌えない。同じに歌っているつもりでも、彼のようにクールなサウンドにはならないのだ。それでもあの歌を歌うと、みんな喜んでくれる。 私の現在勤務するオフィスは、シナトラがよく通っていたレストランやバーのすぐ近くにある。ミッドタウン52丁目は50年代までジャズバーが並ぶ通りだったのだ。現在、1店舗を残して全く面影の残らない通り。それでも偉大なジャズミュージシャン達の魂がまだ息づいている気がするのは、私だけだろうか? 私は現在、初のアルバムを作成中。8月に1回目のレコーディングをしてから、かなり時間がかかってしまったが、そろそろ完成する。ほとんど自作曲だが、1曲はシナトラが歌った曲、”I've Never Been In Love Before" を録音した。私の曲はポップスだったり色々だけど、これからもやっぱりジャズは歌いたい。ジャンルはあまり関係ないのだ。私は歌う事そのものが好きなのだから。そして作曲。ファッションや食事みたいなもの。いつも違うスタイルで、違う表現をする事が楽しい。シナトラもジャズだけではなかった。My Wayも最高だ。 シナトラは82歳で亡くなった。彼は才能があっただけではなく、音楽に対していつもパーフェクトを求めていたようだ。(だからこそアメリカでは質のいい音楽が聴ける。彼らの求める完璧さのお陰で。。。)長い人生、もちろんアップダウンがあったが、いつも”続ける事が大切”と言っていたそうだ。歌の他にキャンバスに絵も描いていた。かなりの腕前。それでも作品は売らなかった。オレンジがハッピーカラーで、絵にもオレンジを使う事が多かったようだ。彼にとって、描く事はメディテーションのようなものだった。一見華やかな音楽の世界、その陰には完璧な音楽を演奏したいという情熱と精神安定の努力がある。そして1曲ずつ、毎回毎回、最高のものを目指す事。最高のものは時空を超える。これからもシナトラの歌声はニューヨークで、アメリカで響き続けるだろう。 |
Archives
April 2022
Categories |